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ヘッジファンドと金融危機 ニュースの聞き方

 シリコンバレー銀行の金融破綻をきっかけとした世界の金融マーケットの動揺は当面は続きそうです。これがリーマンショック級になるのかならないのか、自分の持っている金融資産への影響がどうなるのか、今は誰もが不安だと思いますが、金融マーケットが荒れた場面で必ずニュースに登場する言葉に「ヘッジファンド」があります。本日の投稿を読んでいただければ、ヘッジファンドの一般的な特徴を理解することができ、自分の投資行動を決める上で参考情報を集めることが来ます。私は社会人を長くやっていますが、財務経験もありますので、あくまでも私の考え方としてではありますが、皆様がヘッジファンドのニュースを読む際にお役に立つ情報となれば幸いです。もちろん、実際にニュースをどのように捉え解釈するかは皆様次第です。

 

ヘッジファンドとは

 ヘッジファンドは簡単に言えば、富裕層向けにあらゆる金融手法を駆使して運用益を出すことを目的に設定された非公開の投資信託のようなものです。とにかく緩い規制の中で多額のお金をまとめて運用するので、大きな収益を出すこともありますし、反対に大損することもあります。海外のヘッジファンドは一口100万ドル以上からと言われるように一般庶民にはとても手が出ませんが、仮に出せる方がいらっしゃったとしても、ハイリスク、ハイリターンの極致ですので、余程お金に余裕がある人でないかぎり手を出さない方が無難だとは思います。

 このヘッジファンドは株式や債券、そしてデリバティブと言われる金融派生商品や金やトウモロコシなどの商品先物など、考えられる金融商品はなんでも売買しますし、動かすお金の量は半端ではありませんので金融マーケットに与える影響は甚大です。そのような背景もあって、相場が乱高下する際には、ヘッジファンドという言葉がよく引き合いに出されます。

 

ヘッジファンド金融危機

ポンド危機

 ジョージソロスという著名なヘッジファンドの投資家がイングランド銀行と戦って、最終的にはイングランド銀行に勝ったという話しはあまりにも有名です。1992年、ソロスが運用するヘッジファンドがイギリスのポンドに大量の売りを浴びせ、イングランド銀行が為替介入でポンドを買い支えようとしたにもかかわらず、結局、ソロスが分析した通り、イギリス実態経済に比べ過大評価されていたポンドが一気に下落した出来事です。

アジア通貨危機

 ソロスは1997年にはタイバーツの急落を引き起こしたアジア通貨も引き起こしています。アジア通貨危機では、韓国では韓国ウォンの暴落によって金融・財政政策を国際通貨基金IMF)に管理されてしまうという屈辱を味わったことでも有名ですが、そのあたりの出来事は「国家が破産する日」という映画でも材料にされています。

リーマンショック

 リーマンショックそのものは2008年にアメリカのリーマンブラザーズが破綻したことを契機に引き起こされた金融危機ですが、背景にはサブプライムローンと言われる金融商品があったことが知られています。ただ何よりも株価が大暴落したことをきっかけに多くのヘッジファンドが損失を出し、その損失を確定するために売れる資産を売るという行動を起こしたことで混乱が加速する役割をヘッジファンドは担ってしまいました。

 ヘッジファンドの運用手法にレバレッジ取り引きというものがあり、これは梃子の原理といわれ、少ない資金を元手に多くの資金を動かす手法ですので、儲けるときに大きく儲けられる反面、損するときは大きく損するため、こうした金融マーケットの混乱を加速してしまう側面を持っています。

 

ヘッジファンドが金融マーケットで果たす役割

 ヘッジファンドはそもそもは富裕層向けの資産運用ですが、売り買いが膨大なことから、金融マーケットが成立するための流動性を提供してくれている重要なファクターでもあります。ドルを買いたければいつでもドルを変えます。国債を買いたければいつでも国債を変えます。こういった流動性が十分保たれた金融マーケットは、ヘッジファンドの取引無しでは成立しないと言っていいと思います。

 一方、信用でお金がお金を生む手法がヘッジファンドの資産運用ですので、金とかモノとかのような実態の裏付けはないことから、ひとたび一方向に相場が動くと、極端な方向に相場を動かしかねない危険な性格も持っています。わかりやく言えば、ヘッジファンドにおいては、1億円の何かをかったら、最後は1億円の何かを売らないと取引は終わらない(専門用語ではポジションをクローズすると言います)為、経済成長以上に膨張した資産運用分は、何かが起きて信用が崩壊し、気が付いたら資産運用益は蒸発しているということが歴史的にも起こってきたということです。

 

ヘッジファンドの動向に関するニュースには要注意

 ヘッジファンドの運用が、正しいか正しくないかはあまり考えても意味はありませんが、今のおカネ余りの世界で、ヘッジファンドの行動が大きく金融マーケットを動かしているということは頭の片隅に置いておく必要があります。そして、何か混乱が起きた場合は、今までとは逆方向に一気に動くことが多く、その理由のひとつはヘッジファンドのポジション解消にあると考えられます。そうした急な相場の動きの中での個人の行動としては「守り」が大切だと思います。

 ヘッジファンドは、何か混乱があって一旦ポジションを解消しても、金融マーケットでお金が余っている限り、また別のヘッジファンドがポジションを積み上げ始めます。ニュースを聞いていて、ヘッジファンドのポジション解消の動きが落ち着いたように感じられたら、個人としても「攻め」の資産運用を再開することを検討しても良いのではないでしょうか?

 今の金融マーケットの混乱にディーラーでもない私が一喜一憂しても仕方ありませんが、コロナの影響で世界的な金融緩和が進み、これだけお金が余っていたのですから、中長期的な目線で理想的なソフトランディングはなかなか難しいのではというのが私の個人的な考えです。今後の状況次第では、ヘッジファドのポジション解消などの動きが活発になる可能性がありますので、そのあたりを気を付けてニュースを聞いておくと良いと思います。